近年需要が伸びているオンライン診療ですが、以前より離島や僻地などの医療過疎地域で切望されてきた歴史があり、最近になってようやく普及が進んできました。
発端は1997年、オンライン診療という言葉ではなく「遠隔診療」と呼ばれていた頃に、当時の厚生省が一定の条件でのみ遠隔診療を認可したことに始まります。当時は今よりも通信機器やそれに伴う技術が不足しており、離島や僻地などの限定的な場面に絞られていたため、一般的にはそれほど普及しませんでした。
その後、2015年に厚生労働省から各医療機関に対して事実上の遠隔診療解禁通知が送られました。1997年の遠隔診療について示された条件はあくまで例示で、その他の患者に対しても医師の判断で遠隔診療を行っても問題ないといった内容です。このタイミングで、名称もオンライン診療に変わりました。
オンライン診療が一般的に解禁されましたが、ここでもいくつかの課題がありました。保険診療で認められるオンライン診療には厳しいルールが設けられており、疾患の種類や利用可能な患者の条件などが定められていました。オンライン診療はあくまで対面診療の補完的役割であり、基本的には対面診療を行うべきであるといった考えが根底にあったようです。加えて、オンライン診療の普及に伴うトラブルを最小限に抑えたいといった思惑もあり、想定よりも普及しませんでした。
しかし、オンライン診療は対面診療とは別種であり、対面診療では叶えられない需要を満たせる可能性を秘めています。オンライン診療であろうと、急変対応が必要な際には可能な限りの対応をするという方針は変わりません。むしろ、病院搬送までに時間がかかる地域においては、オンライン診療という選択肢が増えることでむしろ命が救われる可能性が高まるといっても過言ではないでしょう。
2020年に入り、新型コロナウイルス感染症の拡大が世界的に問題となったことで、オンライン診療を取り巻く状況は一変しました。厚生労働省はオンライン診療に関するルール改定に取り組み、初診からでもオンライン診療を可能とするなど、これまで普及が進んでいなかった要因が奇しくもコロナ禍騒動によって解消されたのです。当初は新型コロナウイルス感染症の拡大が収まるまでの限定的な措置でしたが、収束の様相を呈さない状況を受けて措置の適用は長期化しています。今以上に普及が進み各医療機関の体制が整えば、コロナ禍が明けた後も現状に近い形でオンライン診療を継続的に提供できる可能性があります。
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